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椅らば大樹-(15)

龍蔵寺の大イチョウ

埼玉県加須市、龍蔵寺の境内にこのイチョウがあります。樹齢650年、高さ約50メートルと言うサイズそのものは驚異的とまでは言えませんが、それでも写真左下に一部白く見えるのが人物でありますから、明らかに「大樹」で、加須市の「市の木」とされ、この樹を含む龍蔵寺のミドリは市域一帯で鎮守の森の風情があります。
寺誌によれば「昔、この地に百丈の白大龍が棲息し、人々を悩ましたという。開山教蔵上人が白龍得度の際、白龍の首をもたげし地に龍蔵寺を創立、尾の止まりし地に弁天を勧請し、龍頭、龍尾のありし箇所におのおのイチョウを植えて形せり。、、、」とあり、このイチョウが龍の化身としてイメージされていることを伝えています。
龍蔵寺は一心寺と同じ浄土宗で埼玉地方を代表する大寺ですが、ここが龍蔵寺と言うお寺になる前からここに巨大な龍を思わせるイチョウの大木とその棲家を思わせる鬱蒼たる森があり、人々の心と深く結びついていた、、、そんなことが連想されてきます。日本に仏教が広まるはるか以前から、こうした霊的な森、神的な樹木が存在し今日に到るまで私達の心に根をおろしている、、、。
この木を見ながらそんなことを思いました。

2009/11/09