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「椅らば大樹」-(10)

天神ノ森の大クス

一心寺に沿う国道25号線北向かいの安居天神の森にこの樹があります。高さ17m。クスの樹としては巨木と言うほどのものではありませんが、街中にはめずらしい鬱蒼とした「天神ノ森」の一画に存在感を見せているように思われます。大阪市の「保存樹」に指定されてもいます。
この樹がいつからあったのか定かではありませんが、平安時代の901年、菅原道真公が大宰府に左遷となった折、道明寺におられた伯母様をお訪ねになり当地で休息されました。1614年大坂冬の陣では家康公が茶臼山一帯に本陣を張り、当地も兵馬で一杯になったかもしれません。翌1615年夏の陣では真田幸村が一心寺付近に陣を張って阿倍野方面から総攻撃して来る東軍を迎え撃ちました。この時幸村は一心寺北門付近で家康をもう一歩のところまで追い詰めたと言うエピソードがあります。幸村はその直後、休息中のところを越前隊の鉄砲頭西尾久作に槍で突かれて落命。この場所が真田幸村討ち死にの地とされています。毎年5月7日あたり「幸村祭」が挙行されています。江戸時代の末から明治にかけて上方落語の古典「天神山」の舞台になったのもこの付近です。今は「都心」。ちょっと前までは「森」。その面影を宿しているような立派なクスの樹です。

2009/05/20