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「椅らば大樹」-(6)

「この木なんの樹、、、」

日立提供TV番組のコマーシャル画像でおなじみの「この木なんの樹」の映像はハワイ・ホノルル空港に近い公開庭園モアナルガーデンにある通称モンキーポッドだそうです。樹齢約120年、高さ25m、横直径40m。猿がそのサヤの実を好んで食べるところからモンキーポッド(サヤ)の名で呼ばれ、
アンブレラ・アカシヤの別名も聞いたことがあります。TV画像の印象では灼熱無辺の草原に安らぎの木陰を創出している「一本の木」みたいな感じですがハワイのこの一帯はモンキーポッドだらけで、街路樹としても、公園樹としても「なんの木?」と脚光をあびる事はまったくないように思われました。
日本でも育てればいいじゃないかと思われそうですが、必ずしも簡単ではありません。通常、樹木の根は地下で地上の枝張りと同程度の大きさに根を張ると言われ、上空の空間と同じサイズの地下「空間」がなければ生きて行けません。したがってこの木を街路樹にしようとすると道幅にかなりゆとりのある道路でないと不可能と言うことになります。大阪御堂筋のイチョウは有名ですが、地下空間という意味では歩道に埋め込まれている電気・ガス・水道の「共同溝」、雨水排水管、下水管に空間を削られ、地下鉄、地下道に大幅に占領されていますから根を伸ばすことの出来る空間はまことに狭い。仕方なく車道下に根を伸ばすと年中自動車の衝撃を受けて、いわば傷だらけ。根にとっては雨水も、酸素も必要ですから、アスファルト舗装はありがたくない、、、。そんなわけでイチョウの実はどちらかと言うとショボクレています。よく見ると葉も樹幹もやせていて、「立派」とは程遠い状況に思われます。と言う訳でモンキーポッドみたいな嵩高い樹木はむつかしい、、、と言うのが実情なのです。
人間が都市で樹木と共生するためには樹木の生きる場所を確保しなければいけない。目に見えるところだけではダメなんですねー。それでもやはり椅らば大樹。これからの都市環境は樹木とともに生きる共生の空間でありたいものです。

2009/02/24