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「倚らば大樹」-(1)

コモンウエルスアベニューの楡

ボストンレッドソックスのフェンウェイ球場が、大阪のかつての難波球場の位置だとすると、この写真の樹木の風景は御堂筋に相当するようなボストンの中心部にあります。違うところは御堂筋では中央車道に相当するところが緑地になっていて写真に見るような4列の楡の街路樹があり、街路と交差するたびに銅像があったり、ちょっとした広場があったりで、ベンチで読書の人、木漏れ日の中で写生する人、フリスビーに興じる人、もちろん犬を連れて散歩する人、ジョギングの人、、、まさにボストン市民の憩いの場所となっているように思われました。御堂筋の側道に相当するところだけが車道になっていて、有名なボストンマラソンではゴール直前に組み込まれています。

私がここを初めて訪れたのは5月初旬。冬に落葉していた楡の大樹群が一斉に若草色の新緑を帯び、アベニュー両側のレンガタイル建築の前庭にはコブシやハナミズキやチューリップや、、、色とりどりの花々が咲き乱れておりました。実はバックベイ(入り江)という名のこの場所は殖民地ボストンの初期には海に面するボストン河口に入り組んだ「入り江」でした。入り江を堰き止めて池を作り、落差を利用した水車の粉引き場がありました。南北戦争が終わって国内発展の時期を迎えるに当たって、この水面を埋め立て新興産業資本家のお屋敷街が建設されました。それがこの空間です。日本ではちょうど黒船が浦賀水道に現れていた頃です。この楡の大樹はその頃からのものだそうですが、立派なものですね。

2008/09/01