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「椅らば大樹」-(13)

キイウエストの家  ヘミングウェイが「老人と海」を書いたアメリカ・フロリダ州南端キイウエストの家−別荘的なもの。キイウエストは石垣島とか台北と同じ北緯24度。 

 瀟洒な家をスッポリ包み込んでいるような「大樹」の庭木です。シュワルツネッガーのアクション映画で、延々たる海面上の橋をヘリが追い、車が逃走する有名なシーンの南端がキイウエスト。向かいはキューバです。私が訪れたのは20年も前の暑い暑い8月。町を見物して歩くにも日陰をよって歩く有様で、大樹の木陰のこの家がひとしお心地良げに思われました。
 この海の町を歩くとあちこちにヘミングウェイゆかりのレストランや喫茶店やバーがあります。そこに「本日の日没時刻」をチョークで書いた小さな黒板。書かれた日没時刻に浜の岸壁に行ってみるとかすかな涼風に誘われてか、数百人の人、人、、、、。露店が並びネコの火縄くぐり、笛に踊るコブラ、大蛇と記念写真、、、いろいろな大道芸人たちが並ぶ一方、海に向かって岸壁に坐る人々。空には観光セスナが飛び、海面にはプレジャーボートやら観光ヨットやら、、、。全部が「本日の落日」を見に来ているのです。やがて、太陽が水平線に近づくにしたがって辺りは静まり、太陽が海に接し、沈み、ついに没して消え去ると何故か静かな拍手がおこりました。
フロリダ・キイウエストで「日想観」を見たと思いました。

2009/08/11