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「椅らば大樹」-(8)

サクラ

1972年に32歳で私は一心寺住職になりました。
一心寺の過半がその頃まだ戦災状況でした。杜甫の詩「国破れて山河あり」が詠じられ、とくに軒並み空襲された大都市では「城春にして草木深し、、、」どころか、大部分が緑のない焼け野原だった訳です。何とか復興しなければ、、、と言う思いは、いい換えればミドリ豊かな寺院空間を取り戻さねば、と言うことに他なりません。その第一に挙げられたのがサクラだったと思います。私たちは焼け跡にサクラを植えることから復興にとりかかったのだと思います。
 今年も春になり、自慢できるほどのものではありませんが一心寺境内のそこここにサクラの花が咲きました。その白さに戦災直後の先代住職の頃からの50年余が思い出されます。いつでも何処でも誰にとってもサクラは思い出深い花、、、そんな気がします。このサクラは25号線北側にある「一心寺写経堂」の庭のまだ若い枝垂れ桜。この樹が大木の古木になるころ、また新たな感慨があって欲しいものです。

2009/04/03